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切通理作
2017.3.24 04:03

話し方教室をしてる場合じゃないよ


「籠池漬け」だった昨日とは打って変わって、今日は一日仕事しようかと思っていたら、午前中の国会中継、うっかり全部見てしまったではないですか!

 

福山哲郎議員が、例の内閣総理大臣夫人付秘書から籠池氏に送られたファックスを、二枚目に書かれた具体的な内容も含め突き付けて質問しました。

 

首相以下自民党は、総理夫人付きの公務員が、総理の公務を補助遂行するためにいるとしながらも、安倍昭恵夫人の秘書谷査恵子氏(当時)が動いて、国有地の取引に関し財務省から回答を引き出し、来年度の予算措置をはじめさまざまな対策を講じることを約束したことは「公務ではない」と言い張りました。

 

福山議員が、総理の公務を補助遂行するために秘書が動いたということは、それイコール総理の公務ではないかと言った途端、安倍首相は鼻で笑いました。

 

このやりとり、新聞の夕刊ではどう報道されるのでしょうか。

いくらなんでもおかしいという論調になるのかどうか、不安もあります。

 

福山議員も、本当はこういう、人前で他者を指弾することは苦手なのか、ちょっと怯えたような態度が出てしまい、同じ呼びかけ言葉を何度も繰り返したり、ダダッ子みたいな食い下がり方で、「ここはあんたがヒステリーになるんじゃなくて、相手に怒らせなければダメだろう」と。

 

もちろん、不正に対して一人の人間として怒ってみせることも大事ですが、聴く側の感情と同期するようにそれをしなければならないのでは?

 

敬語の中に「だよ」とか「だろ」とかざっくばらんな表現が入るのも、アクセント的なテクニックとして用いているのならいいのですが、彼の場合、どうしても彼自身が幼いという印象を与えてしまいます。

 

聞いている国民に対して、これは瑣末な揚げ足取りではなく、本質的に問題なんだということを、丁寧にあぶりだし、ここぞというときにグイッと畳みかける緩急が必要なのではないでしょうか。

 

相手は、自分たちのどこがウイークポイントかわかっていて、そこをガードしてくるんですから。

 

政府が谷査恵子秘書の個人情報(メアド、携帯番号)を伏せないままファックスを配ってしまったことも、籠池氏への「偽証罪」になるぞという脅しをかける証人喚問とセットで話題にすれば、「権力に都合の悪い者を晒す」政府の体質としてもっとうまく浮き彫りにできたはずなのに、ケアレスミスの指摘に留まった印象になってしまいました。

 

言いたいことで、相手と食い違っている時こそ、落ち着いて、ゆっくり喋る……。

 

僕の脳裏に「ちょっとは籠池氏を見習ったら」という禁句が思わず浮かんでしまったことを、ここに告白いたします。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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